この前、定時で会社を出て、そのまま美容室へ行った。
カットとパーマを終えて店を出ると、外はもう暗かった。
昔の私は、平日の夜に美容室の予約なんて入れたことが無かった。
仕事が入ったらどうしよう。
残業になったら間に合わない。
自分だけ先に帰っていいのか。
そんなことばかり考えていた。
今は、仕事が終わったあとの時間を、少しずつ自分に返している。
①昔の平日の夜は、ほとんど「仕事」だった
昔の私は、だいたい17時から22時くらいまでの間に会社を出ていた。
もちろん、定時で帰れる日もあった。
でも、自分が管理している現場の人たちより先に帰ることには、かなり罪悪感があった。
まだ働いている人がいる。
何か起きるかもしれない。
実際に、帰った後で問題が起きたこともあった
自分だけ帰ったら、無責任だと思われるかもしれない。
誰かに言われたわけじゃない日も、勝手にそんなことを考えて残っていた。
最悪、会社に泊まって仕事をしたこともある。
家に帰れた日も、そこで仕事が終わるわけじゃなかった。
会社のパソコンを持ち帰って、家で続きをする。
本業が終われば、副業をする。
頭が動かない日は、スマホをだらだら眺めていた。
休んでいるというより、何もする力が残っていなかっただけだと思う。
当時の平日の夜を一言で表すなら、やっぱり「仕事」だった。

②仕事が終わらないのは、私の努力不足だと思っていた
仕事が終わらないと、自分の能力が足りないと思っていた。
上司にも、常にそう言われていた。
努力が足りない。
工夫も足りない。
だから急な仕事が入れば、自分の予定よりそちらを優先した。
サービス残業も、会社員なら仕方ないと思っていた。
休日の前日の夜も仕事を考えていたし、休日そのものにも仕事をしていた。
家族との予定より仕事を優先したことも、一度や二度じゃない。
今思うと、私は会社に勤務時間だけを渡していたわけじゃなかった。
家でパソコンを開く時間。
寝る前に仕事を考える時間。
休みの日に連絡を気にする時間。
予定を入れず、何か起きたときのために空けていた時間。
そういうものまで全部合わせたら、平日は一日何時間仕事してたんだ??と思う。
それでも、まだ足りない気がしていた。
③復職してから、平日の夜に予定を入れ始めた
平日の仕事後に予定を入れるようになったのは、復職して、体調が安定してからだった。
最初から、堂々と予定を入れられたわけじゃない。
病院や美容室の予約を入れても、
「その日に突発の仕事が入ったらどうしよう」
と不安になった。
予定の時間に間に合うように帰るだけなのに、仕事を途中で投げ出すような気持ちが少しあった。
それでも、何度かやってみた。
定時で会社を出て、そのまま病院へ行く。
別の日には、美容室へ直行する。
友人と会う予定を入れることもあった。
やってみたら、ものすごくよかった。
平日のうちに美容室や病院を済ませられると、休日が丸ごと残る。
休みの日に朝から予約時間を気にしなくていい。
妻と出かけてもいいし、家でゆっくりしてもいい。
平日の夜に一つ予定を入れただけなのに、休日まで少し広くなった気がした。
大きな決意があったわけじゃない。
「今日から仕事中心の人生をやめる」と宣言したわけでもない。
本当に、少しずつだった。
隣の席には、よく定時で帰る同僚がいた。
家庭を大切にしていて、仕事が残っていても、帰る日はちゃんと帰る。
その姿を見ながら、こういう働き方でもいいんだと思った。

④定時後に予定がある方が、仕事は早く終わった
昔は、仕事が多い日にこう思っていた。
「どうせ今日も終わらないしな」
そう思うと、気持ちまでだらだらしてくる。
終わりの時間が決まっていないから、急ぐ理由もない。
一つのことを長く考えすぎたり、私じゃなくてもできる仕事を抱えたりしていた。
今は、分からないことを5分考えても分からなければ、人に聞く。
自分以外にもできる仕事なら、誰かにお願いする。
その仕事を私がやらなかったら、本当に誰が困るのかも考える。
定時後に美容室の予約がある日は、
「この時間までに終わらせるぞ」
と自然に思える。
不思議だけど、帰る予定がある日の方が仕事は進む。
昔は、長く会社にいることが頑張っている証拠みたいになっていた。
今は、できるところまでやって、必要なら人に頼んで、さっさと帰る。
その方が、翌日の私も少しマシだった。

⑤仕事のあとに、ご飯を作れる日が増えた
今の平日の夜は、仕事だけでは終わらない。
先に家へ帰った方が、洗濯や洗い物をする。
晩ご飯を作って、妻と一緒に食べる。
時間と体力が残っている日は、少し品数を増やせる。
おかずを二品、三品と食卓に並べられた日は、妙に満足する。
誰かに評価されるわけじゃない。
給料が増えるわけでもない。
それでも、
「今日は自分の生活をちゃんと進められたな」
と思う。
疲れている日は、筋トレや読書は諦める。
外国語の勉強と、日課のソシャゲだけはやる。
中学生の頃、英語のテストで8.5点を取った私が、今さら外国語を勉強している。
人生、何を始めるか分からない。
全部できなくても、少しだけ自分のやりたいことをやる。
それだけで、平日が会社へ行って帰って寝るだけの日ではなくなった。
⑥家に帰ると、暖かいと思えるようになった
一人で暮らしていた頃と今の一番大きな違いは、家が暖かいことだと思う。
部屋の温度の話だけじゃない。
妻とご飯を食べる。
今日あったことを話す。
くだらない話で笑う。
仕事が長引いた日は、先に帰った方が家事をやる。
今でも、仕事に夜を奪われる日はたまにある。
そんな日は、妻と助け合ってなんとかしている。
昔の私は、仕事が終わらなければ、終わるまで残ろうとしていた。
今は、
「今日はできるところまでやって帰ろう」
と思える。
帰った先に生活があるから、切り上げようと思えるのかもしれない。
ある時、妻が「私、幸せだなー」と言ってくれた。
というか、よく言ってくれる。
何か特別なことをしている時でもない。
何気ない幸せを、2人で噛み締めてる。
会社であと一時間働くことより、こういう夜を残しておきたいと思った。

⑦平日の夜が戻ると、人生も少し動き始めた
仕事後の時間を取り戻したからといって、何か大きな成功をしたわけじゃない。
定時後に美容室へ行った。
病院へ行った。
友人と遊んだ。
妻とご飯を食べた。
外国語を少し勉強して、ソシャゲをやった。
書き出すと、本当に普通のことばかりだ。
でも、私にとっては、その普通の時間が長い間なかった。
昔は、仕事と副業で頭がいっぱいだった。
今日を削って、いつか良い人生にしようとしていた。
今は、仕事が終わったあとの数時間を、自分のやりたいことや、少し良い将来につながることに使いたいと思っている。
外国語を勉強するのもそうだし、妻とご飯を食べることもそうだと思う。
仕事を頑張らなくなったというより、自分と、自分の大切な人の幸せを守るようになった。
平日の夜が自分のものになると、停滞していた人生が、少しだけ前へ進んでいる気がした。
もちろん、毎日きれいにはいかない。
残業する日もある。
帰って何もしたくない日もある。
スマホを見ていたら、夜が終わる日もある。
それでも、仕事が終わったら、そこから先は私の生活だ。
今日はご飯を食べるだけでもいい。
ゲームだけして寝てもいい。
何か一つ、自分のために時間を使えたら、それで十分な日もある。
会社から家へ帰る道で、仕事のことがまだ頭に残っていても。
家のドアを開けて、暖かい部屋に入る。
妻とご飯を食べる。
少し笑う。
そうしているうちに、仕事だった一日が、少しずつ私の一日に戻っていく。
明日の仕事は、明日またやればいい。
今夜まで、会社に渡さなくてもいい。

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